最近、企業トップのスキャンダルが次々と明らかになってニュースサイト上を騒がせています。
・これを書いている7月23日ちょうど世間を騒がせている、芸人の反社勢力に関わった闇営業問題から芸能会社の契約・マネジメント体制不備の露見と経営陣の威圧的な態度。
・ようやく決着がついたようですが経営陣の内紛が続いた住宅設備大手会社。
・少し前ですと2018年11月に東京地検特捜部に金融商品取引法違反の容疑で逮捕され、後に解任された、国際的自動車メーカーグループのCEO。
・粉飾で利益を出し続けた電機トップメーカーや、長年の手抜き工事がバレた大手デベロッパー、基準を満たさない製品を検査をゴマカシて出荷し続けていた部品メーカーも何社かありましたね。
政治や芸能の世界でも不倫だとかパワハラだとか、どちらかというと下世話な方向のスキャンダルが次々とでてくるようになりました。
また過去になかった最近の傾向としては、この手の報道に「情報筋によると」「関係者の話では」などといった匂わせ型が激減し、文書なり画像なり音声なりの物的証拠が一緒にきっちりついている「ファクト」型が増えていること、があげられます。
この事は目覚ましいIT技術の進展抜きに説明することは不可能でしょう。
IT(インフォメーション・テクノロジー)は、あらゆるものをつなげ情報を伝え蓄積します。
昔なら、遠い記憶の彼方に消え去った芳しからぬ出来事。
今はあらゆる人がそれにアクセスでき、消去もできませんし、修正してもその行為そのものまで履歴が残ってしまいます。
なのに人間側のスキャンダル対応はというと、口頭での言った言わない時代に培われた、
「言い訳にしてればそのうちみんな忘れてなんとかなる」型から進歩しきれてないことは問題ではないかと感じています。
特にリーダーは近代以来ついこの間まで無謬性(間違いのないこと)を求められてきました。
「間違いを認めてしまったら(キャリアの)終わり」と言うわけです。
ですから、「人の噂も75日」とばかり、嘘に嘘を重ねた苦しい言い訳を強弁したり、仲間と口裏合わせをしたり、部下まで巻き込んででもなんとかしよう、とするリーダーが後をたたないわけです。
しかし、文書(親書ですら)はおろか動画・画像や音声、目撃情報などがITを通じて世界中に広がり、修正も削除も出来なくなった現在、そんな事ができる人がいるはずがありません。
では、リーダーたるもの常に明々白々、公明正大で誰からも後ろ指を指されることのない人間であらねばならないのでしょうか?
もし、そうだとしたら私にはリーダーの資格はないと思いますし、巻き込むつもりはございませんが、これをお読みの皆様もよほどウソがお上手な方以外はそうでしょう。
もっと言えば、リーダーを指弾追求する、正義の味方の側の方々もそこについては全く同じでしょう。
イエス・キリストが、不貞を犯した女に石を投げようとしている人々に「あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい」と語りかけたところ、全員が投げることが出来なかったと言います(ヨハネ8:1-11 1)。
しかし、真実は神のみぞ知るだったその当時と違い、ファクトベースでそれを知ることが出来てしまう私達の時代では、この故事を拡大解釈してリーダーが「お前らも色々あるんだろうからこっちのことも黙ってろ」と言うことは出来ないと思います。
当たり前ですが、「どうせばれるんだからリーダーは多少の過ちを犯しても構わない」、ということ言いたいのではありません。
リーダーたるもの「後で説明のつかないことはしない」「後で人に話せないことはしない」事を心がけることは当然のことです。
ただ、心ならずもあやまちを犯してしてしまった場合(ついやってしまった、という時も)、言い逃れや自己正当化でその場を切り抜けようとするのではなく、その事を数々の証拠とともに正直に認め、そのことについて真摯に謝罪し、許しを乞い、ペナルティを受け再出発するのが、新しいリーダー像ではないかと思うのです。
そう考えると昔のリーダーは良かったですね。
旧千円札で有名な伊藤博文は、芸者さんから華族までかたっぱしから女性に手を付け、仲間から「ほうき(掃いて捨てるほど女がいる)」とあだ名されましたが、そのことで首相の座を追われることはありませんでした。
身近なところでも、エレベーター内で知らん顔で女性社員のお尻を触ったり、毎日の飲み代は全部会社持ちだったかつての上司は定年を全うしました。
出入りの業者さんに自家用車の代金からガソリン代まで負担させていた某社の取締役の話なんかも聞いたことがあります。
ITなんてものがなければ・・・と思う部分が少しでもある方にこの言葉を
「何が技術革新の根源かというと、好奇心(知的探究心)と、(ずぼら)利便性のあくなき追求、この二つが原動力で、とめたほうが人類の幸せにいいのかも分からないけどとめられない。」 辻井重男
辻井氏は、日本の情報工学者、東京工業大学名誉教授 ITで使われる暗号(公開鍵方式)の専門家
つまり今後
1、「情報の非対称性」をテコにしたリーダーシップは急激に効かなくなる。
2,この流れは止まらない。
ということと考えてほぼ間違いないでしょう
私もいつの間にか、まあまあな齢になりましたが、時代にあったリーダーにみずから変化していかないといけませんね。
☆ついでにいうとリーダーには過去「知識優位性(部下より知っていること)」も求められてましたが、変化の激しいこれからは、知らないことは「知らない」とはっきり伝え、部下に教えを請うことができる器の大きさも求められていくと思いますよ。
☆オマハの賢人ことウォーレン・バフェットが会社のお金で1985年新品の高級ビジネスジェット機を買ったとき、共同経営者のチャーリー・マンガーはそのジェット機に「言語道断号」と名付けたうえで、その経費を株主に報告するようバフェットに求め、彼はそれに従いました。結局3年後、彼等はそれを売却し中古の安物に買い換えた時もこのことをきちんと報告しています。