こんにちは! エースラボの布川昭文です。 普段は「出張経理課長」として、契約企業様の日々の経理処理や毎月の状態把握に欠かせない月次試算表作成のお手伝い、さらには資金繰りや、資金調達に関わる支援業務を行っております。 これまでの経験をもとに数回にわたり、「経理業務に直接タッチしない社長さんでもここだけは知っておいてほしい」「ここを押さえておくと経営が楽になりますよ」というところをピックアップし、なるだけわかりやすく、簡略にお伝えしていきたいと思います。
前回に引き続き「決算書の読み方」をお伝えします。
今回はバランスシートの読み方について触れていきたいと思います。バランスシートはある時点(20XX年3月31日)の財政状態を表しています。左側に「資産」、右側に「負債」「純資産」が表記されており、左右の合計額が一致します。式で表すと『資産=負債+純資産』となります。バランスシートの歴史はとても古く若干の変更はされたものの、500年に渡っています。イタリア商人が使っていた決算書が始まりだなんて意外だと思いませんか?なお、日本に紹介したのは福沢諭吉です。
損益計算書はよく見るけど、バランスシートは見ないなぁという社長も多く見受けられます。皆さんは自社のバランスシートの内容を把握してますか? 流動資産の現預金残高や在庫の数、固定資産の保有状況、一方で借入金や買掛金など返済をしなければならない債務がいくらあって、自己資本の状況は?最低でも資産、負債、純資産の状態くらいは掴んでいないとヤバイです。優れた経営者はバランスシートの本質を掴んでいるということを覚えておいてください。 第1回目のおさらいになりますが、「資産」には企業が所有する物や権利が含まれており、「負債」には企業が支払わなければならない債務が含まれてます。「純資産」は、株主資本と利益剰余金から構成されています。
バランスシートを読むにあたっては、該当年度だけではなく、前年度と比較をすることが大切です。科目ごとの増・減が経営の結果を表しています。バランスシートを使った代表的な財務分析を紹介させて頂きます。
Ⅰ流動比率 皆さんも会社のお金の状況がとても気になるかと思います。支払わなければならない債務がどのくらい手元のお金で賄えているのか?こういった状況を確認できるのが流動比率になります。流動比率を求める算式は、「流動資産÷流動負債×100」で求めることができます。数値としては200%あれば理想と言われています。ここで出てきた流動資産、流動負債って何?と思った方のために簡単に説明をします。 流動資産:資産のうち1年以内に現金になるもので、「現金・預金」「売掛金」「たな卸し 資産」などが該当します。 流動負債:一般的に1年以内に支払われなければならない借金で、「買掛金」「短期借入金」 が該当します。 ここで、注意しなければならない点があります。流動資産の中には、数字と実態がかけ離れている可能性のあるものがあります。「たな卸し資産」には不良在庫があり、既に価値が無いものも含まれている場合があります。本来であれば損失処理がなされなければならないのですが、そのまま「たな卸し資産」として計上されてしまっているケースや、「売掛金」の中にも不良債権が含まれているケースもあります。本来であれば回収不能額については損失処理がされなければなりませんが、そのままになっているケースが多く見受けられます。この「たな卸し資産」「売掛金」は共に資産の過大計上となっている状況になります。科目ごとに回収不能のものが含まれていないか確認したうえで、流動比率を求める必要があります。資産が過大計上のままで、流動性が高く、資金的に安定しているとみるのは危険です。 Ⅱ固定比率 純資産に対する固定資産の割合を言い、固定資産がどの程度、純資産で賄われているかを見る指標です。算式は「固定資産÷純資産×100」です。固定資産は、返済の必要が無い純資産で調達することが望ましく、低いほど安全性が高くなります。100%以下が理想です。 流動資産同様に、固定資産でも実態と数字がかけ離れている場合があります。良くあるのが赤字なので減価償却費を計上しないといった処理を行うというケースです。また、土地についても含み益や含み損が発生している場合は、実態と数字が乖離していると言えます。
Ⅲ自己資本比率 自己資本比率とは総資本(負債と純資産の合計)のうち、どのくらい自己資本でまかなわれているかを示す数値で、会社の財務体質を知るのに有効と言われています。自己資本は返済の必要がないので、一般的には高い方が良いとされており、数値的には30〜40%あれば倒産リスクは低いと言われております。業種によって目安の比率は異なります。 以上がバランスシートから読み取れる財務分析の一例です。是非自社のバランスシートを参考に計算してみてください。
まずは、今回はここまで。次回も今回の続きの説明をいたします。