Vol.42_断るために?

エースラボの本拠地は杜の都と呼ばれる東北の仙台にあります。

しかし私自身が受け持つ仕事はいろいろご縁があって西日本主体。

多いときは月に2回ほど飛行機で仙台ー大阪伊丹空港や中部国際空港を往復します。

ついこの間までは座席が満席になるなんてことはほとんど無く、ひどいときは「乗務スタッフの方が乗客より多い」なんてこともあったのですが・・・

先月11月のとある日の仙台への帰路はほぼ満席状態、私もめったに座らない、3列席の真ん中(B席)でのフライトとなりました。

無事着陸後、いつものように機体の少し後ろ側の席にいた私は、真ん中の席ということで、通路側C席の方が立ち上がるのにシンクロして、通路に出ました。

少し前に進むと、通路側C席でかばんを持って立ち、通路に出ようとしてると思しきご婦人がいます。

そこは自他ともに認める「紳士」のこの私、当然のごとく無言で右手を差し出し「お先にどうぞ」のジェスチャーをしました。

その時の落ち着き払った私は、これから起こることを全く予測することができませんでした。

なんとこの御婦人、私の目をキッと見据え、毅然と手を差し出し「あなたからどうぞ」のジェスチャー。

「え? なんで俺がゆずられるの? じゃあなぜこの人は立って待っていたの??」

好意が無になったとまどいと気恥ずかしさで、うつむき加減のまま足早に機外に出た私は、その後も30分ほど気分がモヤモヤしたままでした。

「もし急いで降りたくないなら、席にすわって待っているはず。」

「なんで、わいろを断る警察官のような毅然とした態度で?」

「少なくと5秒間は流れが止まったよなぁ(私は流れをとても気にする男なのです)」

「もしかしたら、後ろに家族か誰かがいて、その人が来るのを待っていたのかなぁ?」

うん、きっとそうだ、そうに違いない、と自分を納得させた私ですが、一旦ネガティブに傾いた私の心はそう簡単には納得してくれません。

「え? もしかして あのご婦人は 断るために立っていたのでは?」

まあ、もちろんそんな訳はなく、これを読んだみなさんも、私の思考回路の暗黒舞踏会に、さぞ「キモ!」と思われた事でしょう。

とはいえ、この「そぶりを見せておきながら断る」に代表される「こう見せておいて実は」というのは案外世にあふれているのではないかと思うのです。

1,子供がべそかいているので、よしよしすると・・「うそー 泣いてないもーん」という初歩的な「ウッソぴょ〜ん」型。

2,おごられる気マンマンで来ておいて、勘定のタイミングでいったん財布を出して見せて、渋々引っ込める、昭和スタイルの「ここは私が」型。

3,ボールを支配していると思っていたら、実は預けられていただけ(泣)。

疲れ切った後でしっかり金利(ゴール)を取られる、高利貸し型サッカー(祝ドイツ戦・スペイン戦快勝)。

1,のケースはまあ可愛いというかなんというか、たとえ大人がやったとしても、「稚気あふれる悪戯」という程度で実害もないでしょう。

2,もごちそうになったほうが負い目を感じて、相手との地位が相対的に下がってしまう、という経済人類学的な見地から見て、それをいくらかでも和らげようという、儀礼的な代償行為、と考えれば納得がいきます。

3,はワールドカップシーズンなので例として入れましたが、ゲーム戦術なので致し方ないですね。

そんななかでも「あなたそれ良くないよ」と思うのが

4,「自分で話題振っておいて 自分が締める」型

犯人 「最近食べて美味しかったものある〜?」

被害者A 「隠れた名店くせ〜軒のニンニクニラニラマシマシラーメン!」

被害者B 「秋葉原もえもえ館のきゅんきゅんオムライス!最高ですよ〜」

被害者C 「念願の北海道旅行で食べた夏の花咲ガニ最高でしたぁ」

犯人 「ふ〜ん 俺はやっぱり 赤島にあるリストランテBAEBAE茶寮で食べた 赤島和牛のステーキかな〜。 

知ってる?、あー知らないよね〜赤島和牛って言っても。

IT長者の持金さんているでしょ。あの人のプライベートアイランド赤島で特別に育てた和牛だから赤島以外には出回らないわけ。

ほら俺って持金さんとマブダチじゃん そんでもってうんたらかんたら・・(以下省略)」

犯人さんは相手に勝てるカードがあることを確信して話題を振っているので、その場では絶対勝てるし、ご本人はさぞかし気分がいいのでしょうが・・振られた側はたまったもんじゃありませんね。

しかし、やられる一方だったこちらも、だんだん慣れてくると、振られても答えず

「いやー私たちなんて、毎日おんなじものばっかりですから〜(笑)。

ちなみに犯人さんは何が美味しかったですか〜?」

なんて振り返されて、いきなりオチを言うハメになることに。

それでもなんにも感じず気分よく「うんたらかんたら」やっていると、すぐに話題を変えられたり、どんどん仲間が減ってきて、おんなじような「香ばしい」メンバーで張り合うだけの「マウンティング無間地獄」にもれなくご招待、と言うことになってしまいます。

つまり、「ケンカに勝って勝負に負ける」「戦術で優れていても戦略的に敗北する」「投機で勝って、投資に負ける」。

長期的にはご本人にとってもいいことがありませんし、巻き込まれる方もただただ困惑&迷惑。

今となっては確かめようもありませんが、あのご婦人のこれからのご多幸をお祈りするばかりです(しつこい!)。

☆ケース4に巻き込まれた無念さに近いものを感じさせる清水ミチコの爆笑ネタ「ドリカム作曲法」ぜひ検索してYouTubeでご覧になってみてください。

サワダゲンイチロウの 「書かずにはいられない!」 | エースラボ (ace-united.net)