お気づきになっている方も多いと思いますが、私はここで祖業でありグループの稼ぎ頭、ミカド電装商事の仕事の中身や、最近取り組み始めたエネルギーマネジメントやプログラミングスクールの課題と可能性、、、など具体的な商売(事業)の中身についてお話したことは(たぶん)ありません。
電気設備(蓄電池設備と発電設備)の仕事は自分自身10年近い現場経験(感電3回してます)もありますし、いろんな面白いドラマもありましたが、たぶんここでは書かないだろうと思います。
おそらく、「これを読んでいただいている皆様は様々なバックボーンをお持ちなので個々のビジネスの話をしてもつまらないだろうな」、という気持ちが自分自身に働いていたんだと思います。
しかしこのことについて、最近コンサルティングをさせていただいている社長さんたちと色々お話をさせていただく過程で、自分自身ちょっと気づいたことがあります。
その気がついた「たぶんこういうことなんだろうな」、ということを今回はお話させていただきます。
皆様には憧れるスター経営者っていらっしゃいますか?
古くは松下幸之助、本田宗一郎、ソニーの盛田昭夫、京セラの稲盛和夫(この方はファンクラブ?まで持ってます)、渋いところでは日本電産の永守重信(最後のお二人はご存命で活躍中ですね)。
最近のスター経営者といえば、先輩格のソフトバンク孫正義、楽天三木谷浩史、ユニクロ柳井正。
それに続く、堀江貴文、前澤友作は経営者としては失速してしまいましたがまだまだ意気軒昂です。
そうそう「結果にコミットする」ライザップの瀬戸健や、星野リゾートの星野佳路も忘れてはいけませんね。
海外に目を向ければ、イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾスなどなどキラ星のごとしです。
(ちょっと古いけどヴァージン・グループの総帥リチャード・ブランソンはナイトの称号を持つ冒険家でもあります。)
さて皆様のご贔屓はどなたでしょう?
それぞれ個性があって、物語があって素敵な方々ばかりです。
でも私自身が興味をひかれるのはこういう人たちではありません。
(永守さんはちょっと興味があります)
なぜなら彼らは、自身の「事業(ビジネス)」については人前で熱心に語りますが、「経営(マネジメント)」についてはほとんど語らないからです。
じゃあ誰が好きなんだと聞かれますと
一番は最近79歳で取締役に復帰した、しまむら元会長の藤原秀次郎!
・・・っても、あんまり知っている人はいませんよね。
Wikipediaにも記事がありませんし、インタビュー記事も殆どありません。
だからは、私も藤原氏の個人的なことは67歳で飛行士の免許をとったこと以外あまり知りません。
しかし、現在のしまむらの「仕組みを作った人」というところにとても興味があるのです。
しまむらは藤原氏が入社したときはたった一店舗の「島村呉服店」でした。
最近でこそ苦戦続きですが、現在は2000店舗、従業員数3000人を誇るしまむらグループに成長するのに大いに寄与した「中興の祖」と呼ばれる人です。
彼のことは、磯部洋著「強者のしくみ〜論理的思考と全体最適を徹底する会社」で知りました。
この本は当時鈴木敏文会長率いるセブンイレブンと、同じく藤原会長が率いるしまむらを対比しながら、その共通部分「ビジネスプロセスのエンジニアリング」に焦点を当てたものでした。
言ってしまえば「ビジネスの仕組み化」ですね。
本書の2/3弱はセブンイレブンについて書かれていましたが、私の心に強く響いたのはほとんど「しまむら」の仕組みについての記述でした。
「行列はお客様の在庫」という考え方
「店長一人とパート6名で250坪を運営できる」マニュアルの存在
「店舗の陳列、店順から逆算した」トラックへの荷積み
「入荷した商品をトラックの荷受場まで自動仕分けしてシューターで下ろす」プールライン
などなど、目をみはる仕組みのオンパレード。
かの西松屋も、しまむらをリスペクトして店作りをしたと言われています。
しかし私が一番心を惹かれたのは
「トラブルがあった場合、まずシステムを疑う。人は疑わない。システムを完全にすることだけを考える。」
という、人間性軽視なんだか人間性重視なんだかわからない、藤原氏の経営姿勢でした。
当時のミカド電装商事の社員は、志望同期には一応「蓄電池の可能性が云々・・・」と書いてはきますが、たいてい「給与待遇がまあまあいいから」という理由で入社してきます(もっと昔は「ほかに行くところもなくて」でした)。
こういったそもそも商品やサービスに強い愛着のない社員に対し、なんとかモチベショーンを保ってもらおうと、定期的に飲みに誘ったりして一人ひとりとの人間関係構築(部分最適化)に腐心していた私が、段々と付き合いが悪くなっていくキッカケは、つまり藤原氏との出会いだったわけです。
その後は会社全体の仕組みづくり(全体最適化)に邁進し続け、ホールディングス化や多角化など、試行錯誤を続けているのは皆様御存知の通り。
さて、ここからが本題なのですが、最近私はいろいろなご縁で数社様のコンサルタントのお仕事をさせてもらっています。
ごく初期の頃は経営全般についてのさまざまなアドバイスをお引き受けしていましたが、特に最近力を入れて取り組んでいるのが、業務プロセスの改善。
「予算制度の構築」や、「業務体系の再構築」などなど、どちらかというとではなく、かなり間接部門よりのアドバイスやフレームづくりのハンズオン(直接参加)が主にになってきました。
依頼してくれる社長さん方は、私から見たら眩しいほどの輝く才能を持ってます。
社員を鼓舞し素晴らしい商品を開発したり
新しいビジネスモデルをどんどん考えたり
お客様の心をガッチリつかむお店作りをしてたり
私が過去にも現在にも、いや将来にも手にできないであろう、才能の持ち主ばかり。
なのでそういう仕事をお引き受けし始めた頃、私はこう思いました。
「え?こんなんでいいの?あーやってこーやって、、、こんなこと誰でもできることじゃん!
まして、才能豊かな社長さんたちなら、、、」 と
しかし、鈍い私も今更ながら気がついてきました。
みんな、私が持ってないモノを持っていて、どうやらそのぶん私はみんなが持ってないモノを持っている、という事に。
たぶんこういうことです。
「事業」と「経営」ってイコールではないんじゃないか。
いや全く別かも
「事業」と「経営」、たしかにふだん同じ意味に使われていることが多いと思いますし、「何が違うの?」と思われたかもしれません。
私もまだ一言でスッパリとは説明できません。
うまく説明できないときは類似語(シソーラス)で考えるのが一番、というわけで、、
事業(=ハデ)
trade 取引
commerce 商売
industry 産業
product 製品
service サービス
経営(=ジミ)
administration 運営
management 管理
logistics 兵站
corporate Planning 経営企画
process プロセス
という感じでしょうか(お分かりいただけましたよね)
私の顧客は事業の才能が高い事業家
で私自身は経営者だが事業家要素は薄い
たぶんビジネスのプロセスを整えてより少ないインプットで利益が出たり、基盤を強靭化させるのが得意
(我々の主力商品に交流電気を直流に変える「整流器」というのがありまして、「モノが整流だけに、流れを整えるのが上手でしょう」と言うわけです。)
だから顧客は私とタッグを組む事に価値を感じてくれる
という事なんじゃないのかな と
「直接部門」と「間接部門」と言い換えても良いかもしれません。
私や私の会社が比較的そのへんが強いのは、市場が小さくてあんまり粗利益が高くない、言ってしまえば比較的営業の効果が出にくい世界で生き抜いてきたことも関係があるのかもしれません。
間接部門はそれ自体表面上の利益を作りませんのでコストセンターです。
しかし、企業が健全に成長発展して行くにあたって、間接部門はどうしても必要なコストです。
「その会社の間接部門が成長するまでのお手伝い、もしくは外注化」
私がお引き受けしているのはどうやらそういうことのようです。
エースユナイテッドを成長させていくことはもちろんですが、同じくらい、いやそれ以上に私にコンサルを依頼してくださる「事業家」「実業家」のみなさんがどんどん成長していくことが、私の何よりの生きがいになっていったら良いな、とけっこう真面目に考えています。
☆おまけ
・事業と経営の違いについてドラッカーは自嘲気味にこう語っています。
「取引は刺激的で面白く、労働は卑しい事です。どんな経営であれそれを経営するという事は、そもそも膨大な量の細かい仕事の積み重ねです・・・取引はセクシーでロマンティックです。」バフェットからの手紙 著者: ローレンス・A・カニンガムより
・最近は、Googleを大躍進させたエリック・シュミットに興味があります。しかし彼も共同著作したもの以外自著がありません。私が好きな経営者はあんまり自分のことを語りませんね。私はペラペラ語ってますけど、、