ここは、とある会合の立食パーティ。
コロナ明け久しぶりの立食形式で、参加された200人以上の皆さんの活気が伝わってきます。
みんながビールグラスを構えている中、サワダはグラスをテーブルに置いて、上品に見えるよう、手を前に組んで立っていました。
ステージに立ってこれから乾杯のご発声をなさる重鎮の方の、乾杯前の挨拶が長いのを、私は身にしみて知っていたからです。
「ビールは泡までがビール」と固く信じる私にとって、どんなありがたいお話でも、ビールの泡がなくなるまで飲まずに放置するというのは言語道断である、と言わざるを得ません。
ですが、この重鎮の方は仙台には珍しい、日本中にその名を知られた商品を開発された存在にも関わらず、いつも気安く声をかけてくださる人格者。
ですから我々のような、浅学非才な者たちにも何か有益なことを伝えてあげよう、と自然と挨拶が長くなる。
しかも、今日は最初から「長くなりますよ」とおっしゃってからの挨拶スタート。
「あー早く終わんないかな〜・・早くこのビールグラスに口をつけた〜い」というのがこの時の私の偽らざる気持ちでした。
いつものように顔だけは真剣な感じにして、心ここにあらずの状態で、ありがたいはずのお話をスルー気味に聞いていた私の耳に、こんな言葉が飛び込んできました。
「・・・私たち経営者は、真面目に本気で事業に取り組まなくてはいけません・・・」
「ん? 真面目と本気? いっしょじゃないの?」
「だって 本気と書いてマジと読みますって だれかヤンキーも言ってたよ。」
「なんか 若いヤング 的な同語反復だよな〜」
とここまで思った私は、重大なことに気が付きました。
よく考えたら、真面目と本気は一緒じゃないんじゃないか、ということに。
だって、本気でなくても真面目に取り組むことは可能で、実際知っている人の中にも、真面目なんだけど本気じゃないのはいくらでもいるんです。
例えば・・・
・言われたことに真面目にせっせと取り組むが、その目的を本気で考えてないので「言われたことをやっただけです」と、結果についての責任は負わない。
・眼の前の課題に黙々と真面目に取り組んで何かをなした気になっているが、その先のことを本気で考えてないので、いつまでたっても、本来的な課題は解決されず、いつまでも発生し続ける課題に真面目に取り組んでいる。
「仕事は生活の糧」と割り切っている一部の公務員・会社員ならそれもいいでしょう。
しかし、経営者がこれをやると、
・「真面目に取り組みました」というアリバイ作りにせっせと励み、結局報われないと泣き言が出る、の繰り返し。
・最悪の場合うまくいっている経営者の行動や言動を、表面の形だけ真面目になぞって、本気でその行動や言動の深い理由を考えないまま、歳を重ねてしまう。
という落とし穴にハマってしまうのではないでしょうか?
振り返ってサワダ自身は? といいますと・・・
上記2つの悪癖の他に
失敗した時の保険をかけて、真面目に見えるように、一応やることはやるんだけど、実際のところ本気で取り組まない。
という、「逃げる気まんまん」モードに入ってしまうことも多いように思い、大反省。
「・・そうかこの人は、いついかなる時も本気なんだ。」
「だから挨拶もこんなに長いんだ。」
「だから日本中に通用する商品を開発し、販売網を確立し、大事を成し遂げたというのに、もうハッピーリタイヤできるのに、まだまだ新しい商品の開発にも余念がない。」
「だって『真面目に本気で』取り組んでいるから。」
その後何をおっしゃっていたかは全然覚えてませんが、2度3度「終わるかな?と思ったらまだ終わらない」というお約束の後、ようやく
「それでは皆さんのますますのご健勝を祈念してご唱和ください カンパーイ!」
「カンパーイ!!」私もいつになく大きな声で応えていました。
グラスを掲げる手も、いつもよりだいぶ高く上がったと思います(笑)。
私は感じたことを、かの重鎮にお伝えしてみたかったんですが、その方の周りはいつものように人だかりで、控えめを自認する私が近寄れる雰囲気ではありません。
まあ、仮に伝えられたところで、「ナチュラルボーン真面目に本気」な方からしたら、「おまえ還暦も過ぎてなに当たり前の事、さも新発見みたいにいってんの??」となることは必至でしょう。
料理は立食ならではの、参加人数の7掛けに、さらに物価高でだいぶ引かれて、何も食べるものがなかったけれど・・
顔だけはなんとなくわかっている人との会釈や、名前を思い出せない方とのさぐりさぐりの会話で、かなり疲れたけれど・・
「あの挨拶を聞けてよかったな〜」
と会場を後にしました。
さてサワダは今後ちゃんと「真面目に本気で」取り組めるのか?
今後のサワダの取り組みに乞うご期待ください。