こんにちは! エースラボの布川昭文です。 普段は「出張経理課長」として、契約企業様の日々の経理処理や毎月の状態把握に欠かせない月次試算表作成のお手伝い、さらには資金繰りや、資金調達に関わる支援業務を行っております。 これまでの経験をもとに、「経理業務に直接タッチしない社長さんでもここだけは知っておいてほしい」「ここを押さえておくと経営が楽になりますよ」というところをピックアップし、なるだけわかりやすく、簡略にお伝えしていきたいと思います。
今回も引き続き「損益分岐点」について触れたいと思います。今回は意思決定の際に活用できる損益分岐点の利用法について説明をしたいと思います。
どの商品を重点販売したら良いか?
会社で幾つかの商品を扱っている場合、どの商品を重点的に販売をしていったら良いだろう?といった状況になった時には皆様はどの様に意思決定をしているでしょう?
まさか、単価が高いものを重点的に売ろう!とかにはしていないですよね(笑)
このような判断をしなければならない場合にも、損益分岐点の考え方はとても有効です。
次のようなケースに出会うことがあると思います。
Z社は、2つの商品を生産している企業です。現在の生産量は1,000個。細かく検証をしたところ、現在の生産量にプラス500個の余力があることが判明しました。この場合、2つの商品のうちどちらの重点販売が有効でしょう?
商品A | 商品B | 合計 | |
売上高 | 1,500千円 | 1,350千円 | 2,850千円 |
原価合計 | 1,200千円 | 1,200千円 | 2,400千円 |
利益 | 300千円 | 150千円 | 450千円 |
生産数量 | 1,000個 | 1,000個 | 2,000個 |
販売価格 | 1,500円 | 1,350円 | |
1個当たり原価 | 1,200円 | 1,200円 | |
1個当たり利益 | 300円 | 150円 |
皆さんはどう判断しましたか?やはり1個当たりの利益の高い商品Aかな?と思っているでしょうか。上記のままでは判断が難しい状態です。どうしてかお分かりでしょうか?現時点では原価が変動費と固定費に分解されていないので、限界利益が見えなくて判断が出来ないのです。先ずは原価を変動費と固定費に分解します(下図)。
商品A | 商品B | |
変動費 | 750千円 | 450千円 |
固定費 | 450千円 | 750千円 |
原価合計 | 1,200千円 | 1,200千円 |
では、実際に商品を500個追加生産した場合を見てみましょう。
◆商品Aを500個追加生産したケース
商品A | 商品B | 合計 | |
売上高 | 2,250千円 | 1,350千円 | 3,600千円 |
変動費 | 1,125千円 | 450千円 | 1,575千円 |
固定費 | 1,200千円 | ||
原価合計 | 2,775千円 | ||
利益 | 825千円 |
◆商品Bを500個追加生産したケース
商品A | 商品B | 合計 | |
売上高 | 1,500千円 | 2,025千円 | 3,525千円 |
変動費 | 750千円 | 675千円 | 1,425千円 |
固定費 | 1,200千円 | ||
原価合計 | 2,625千円 | ||
利益 | 900千円 |
上記表を見て頂いてお分かりのように、商品Bを追加したほうが、会社にとっては有益という結果になりました。これは、商品Aよりも商品Bの方が限界利益が高いことが要因です。
商品Aの限界利益=売上高1,500千円-変動費750千円=750千円
商品Bの限界利益=売上高1,350千円-変動費450千円=900千円
上記のように商品Bの方が限界利益が高いことが読み取れます。
原価を変動費と固定費に分解することで、限界利益を求めることが大切になります。当初は商品Aの方が1個当たりの利益は高くなってました。しかし原価を分解をして限界利益の比較をすると商品Bの方が高くなります。固定費を除いて限界利益を比較することを覚えておいてください。
このようにどの商品を重点販売しようといった局面に出くわした場合、限界利益の高い商品を重点販売するということがポイントになります。1個当たりの限界利益が分からない場合には、売上高に対する限界利益率の高い商品が有利となります。実際に商品Aと商品Bの限界利益率を見てみましょう。
商品Aの限界利益率=限界利益750千円÷売上高1,500千円=50%
商品Bの限界利益率=限界利益900千円÷売上高1,350千円≒66.7%
確かに商品Bの方が高いですね。
このように経費を変動費と固定費に分解をして限界利益を導き出すことで、現状が見えてくるようになります。今回はここまで。次回をお楽しみに!