前回の「構造としての企画部門(1) 継続する成果・継続しない成果の違いを生むものは??」では成果を継続して生む事ができる構造を会社に持ち込むには、社長や役員を助ける企画部門が必要。と言うことを書かせていただきました。
今回はお約束どおりその中でも中枢というべき経営企画の仕事についてお伝えします。
経営企画は一言で言えば会社の「参謀本部」のようなもの。
優秀な参謀本部があれば経営の成果を爆発的にあげることができますが、運用コストもそれなりにかかりますので、普通の中小企業では持っていることは珍しく、大抵はその役割を社長が兼任しています。
そしてそのことが、中小企業がなかなか成長できない原因にもなっているんです。
本文を通じ、中小企業が経営企画機能をどうやって獲得し、生存競争に勝ち抜き、成長していけば良いのか?
皆様がお考えになるヒントと言うか、起点になれば嬉しいです。
さて今回のお題となります肝心の経営企画部門について、最近話題のChatGPTに「経営企画の仕事は?」と聞いてみると
「経営企画は社長直下でそれらの事業企画を統合する仕事で、組織の経営方針やビジョンを策定し、その実現に向けた具体的な戦略や計画を立てる仕事」
というお答えでした。
なんとなく言いたいことはわかるんですが、少々抽象的というか、具体的に何をするのかわかりにくいですね。
ここではChatGPTが出してくれた「社長直下で」という言葉を足がかりに、経営企画部門を考えてみたいと思います。
ここでは創業間もない社長一人しかいない商社が成功していくモデルを考えてみます。
仮にこの社長を「出来留(できる)社長」と名付けましょう。
この会社は社員がおらず、出来留社長が会社の業務をすべてやるしかありません。
営業、販売、現場作業、納品、請求、入金管理、帳簿つけ、資金繰り、税務申告、事務所・トイレの掃除、日用品の購入などなど・・
もちろん一部の業務は外注も可能でしょうし、日用品は便利なアスクルやAmazonに頼むことも可能です(ただし発注作業は必要ですけどね)。
おそらく、この出来留社長が実際に利益を生むために使える時間は全仕事時間の30%前後でしょう。
(『金策に走る』まで入ってくると使える時間は10%しかないと、知人の一人社長が教えてくれました)
それでも、コツコツ頑張って少し利益が出てくると、出来留社長はその利益で営業社員を増やし、営業に責任を持つマネージャーを雇い、これまで自分がやっていた日々の営業業務の大半を社員に任せていきます。
これで出来留社長は自分でやってきた営業の分身を手に入れたわけで、売り上げも利益も格段に上がっていきます。
そこで上がった利益で経理責任者を雇い、お金の入りと出をしっかりチェックして、お金のことを心配せずに、安心して仕事に打ち込める体制を作ります
次に、経験を積んで稼ぎの増えた大切な社員が辞めない仕組みづくりとして、各種法律に準拠した就業規則の整備、給与体系の構築、福利厚生の充実など主に総務人事系に関わる部分や業容拡大のために採用計画など、社長は次々と着手していきます。
出来留社長が着手した業務の実行者は新しく採用した総務部長とそのスタッフたちです。
これで出来留社長は、経理や人事、つまり総務の分身も手に入れ、会社には営業部門と総務部門が揃いました。
ここで出来留社長は一層の経営改革に乗り出します。
理念・ミッション・ビジョンの確立と、予算制度、中期経営計画に着手したのです。
理念・ミッション・ビジョンについては、とある勉強会の3日間合宿で指導してもらいながら、自分でも満足の行くものを作ることができました。
しかし、具体的な予算や中期計画への取り組みは大変な困難を伴います。
総務部長にも協力を仰ぎますが、日々の仕事に追われる総務部長もなかなか時間を割けません。
結局、出来留社長自らが数字づくりに着手しますが、まずそのやり方の勉強から始めないといけないので、莫大な時間がかかります。
また、今後の事業展開の構想についても、自身が現在の事業に専心してきた分、広い世界に目が行っていない自覚もあり、必要な情報を持っているのかどうか自信が持てません。
毎月必要な決済はもちろん、営業部長を始めとする管理職が持ち込んでくる数々の決済や、あおがれた判断への決断などに追われながらの取り組みに、だんだんと社長の持ち時間や気持ちに余裕がなくなってきました。
「うーん これはまずいぞ 会社の成長のためには将来の計画、つまり経営戦略が必要だ。
しかし経営戦略のことばかり考えていると、目の前の経営や事業の判断、つまり戦術に時間を使うことができなくなってしまう。
しかし自分が目の前の戦術ばっかりやっていたら、会社の成長に欠かせない経営戦略を考える時間がなくなってしまう。」
そうだ、ここは戦略の立案をする部署を作ろう!・・・いや待てよ、今社内には戦略を担当できる人材はいない・・・かと言って今から採用、育成していたのでは間に合わない・・・。」
悩んだ出来留社長は、色々考えた末、前々からレターを送ってきていた「エースラボ」に相談してみることにしました(ここはだいぶ我田引水)。
さっそくやってきたエースラボの担当者(つまり私ですね)は
・当面、会社の戦略を担当する「経営企画」部門をエースラボが代行する。
・出来留社長の理念やビジョンに従った複数の経営戦略を立案。
・出来留社長が決断した経営戦略に基づき、具体的で現実味のある経営計画に落とし込み、戦略の実現を可能にする。
・会社が成長した暁には、独自の経営戦略部門が必要になるので、人材の育成や組織化のお手伝いもする。
といった提案をし、出来留社長はエースラボに依頼することにしました。
出来留社長は、エースラボが提案した複数の経営戦略案から、自身の考えに一番ピッタリするものを選択、さらにいくつかの注文をつけます。
そうして策定された経営戦略に基づき、エースラボは具体的な経営計画を立案。
これを出来留社長が承認すると、さっそく発表会を開いてもらい、社内で共有。
各マネージャーとも打ち合わせし、経営計画に従った部門別の事業計画を立ててもらいました。
実行に当たっては、エースラボがつねに出来留社長やマネージャーに伴走し、自らの事業体験に基づく業務効率化や、精緻な会計知識に基づく数値管理、IT・DXツールの活用などでスムーズに事が進むよう手助けをします。
こうして、エースラボに経営企画部門を代行させた出来留社長は、自前で経営企画部門を持つコストやリスクを回避して、短期間で会社の成長を実現できたのです。
ここから先は、更なる成長のために自前の経営企画部の設立を目指し、人材の採用や育成についてエースラボから支援を受ける予定です。
めでたしめでたし・・・
だいぶ脚色しましたが、エースラボの仕事、そして経営企画の仕事の概略がおわかりいただけたら嬉しいです。
ああ、そうでしたサブタイトルの経営企画部門〜社長が〇〇になるのを防ぐことがその本質の〇〇の答えを話してませんでしたね。
〇〇の中身は「ボトルネック(5文字かい!)」
会社に社長はただ一人。
なので営業や総務のマネージャーは社長の分身として社長一人にすべての事業判断が集中して事業が停滞するのを防ぎます。
しかし、そうなっても肝心の「経営」の担当はしばらくのあいだ社長たった一人。
社長が一人で計画を立案し、決断し、具体的実行に導きます。
しかし会社が一定の規模になったとき、悲しいことに社長自身が一人しかいないので(使える時間が限られる)会社の成長のボトルネック*(阻害要因)になってしまいます。
先のことを考えれば今のことが疎かになり、今のことをやっていると先のことが疎かになってしまうという、「あちら立てればこちら立たず」の二律背反状態。
そんな社長のボトルネック化を防ぐのが「経営企画部門」なんです。
「経営企画部門」社長の最重要で専任事項である「方針策定」「意思決定」以外をすべて代行し、会社のさらなる成長を促します。
しかし、一般の中小企業では「経営企画部門」を設立・維持する負担はバカになりません。
それで結局「経営企画部門」を持ちたいと思ってもままならず、社長一人で経営を引き受けざるを得ない。
そんな経営企画部門の重要性に気がついている社長に、大きなコスト負担なしに経営企画機能を駆使した成長をお届けしたい。
つまり「必要な機能を 必要な時に 必要なだけ」、経営企画部門の仕事を代行するのが私たち「エースラボ」というわけです(気持ち宣伝)。
良い商品やサービスの開発は事業発展にとって欠かせないのはもちろんなのですが、良い経営企画部門を持つこともそれと同じくらい大切なのではないかと、私は思っております。
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今回のお話のまとめ
・経営企画は一言で言えば会社の経営戦略を立案する「参謀本部」。
・優秀な経営企画は経営の成果を爆発的にあげることができるが、運用コストがかかるので、普通の中小企業では社長が兼任している。
・そのせいで、社長自身がボトルネック(阻害要因)になり中小企業はなかなか成長できない。
・良い事業、良い商品を持つことはもちろんだが、いかにして経営企画機能を充実させるかが、中小企業発展のカギ。
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次回は、経営企画の下に属しますがとっても大事な「営業企画」の仕事についてお伝えし、中小企業が営業の構造強化で生存競争に勝ち抜くためにはどうしたら良いのか? について書いていきたいと思います。
☆社長の機能の大半を代行する経営企画部門ですが、絶対任せてはいけないのは、「経営判断」や「意思決定」。なぜなら経営企画部門は、企画業務の責任までしか負えないからです。旧日本軍は陸海軍ともその過ちを犯し、日本を無理な開戦と無惨な敗戦に導きました。
☆こうしてみると社長の仕事って「社員がやらないこと全部」と言えるかもしれませんね。一人の会社なら社長が全部やらなければいけませんし、それをどんどん権限委譲して行った結果、会社が大きくなるとも言えそうです。
*ボトルネックとは、システム設計上の制約の概念。英語の「瓶の首」の意。80-20の法則などが示すように、物事がスムーズに進行しない場合、遅延の原因は全体から見れば小さな部分が要因となっており、他所をいくら向上させても状況改善が認められない場合が多い。このような要因部分を、ボトルネックという。瓶のサイズがどれほど大きくても、中身の流出量・速度(スループット)は、狭まった首のみに制約を受けることからの連想である(図版も含めWikipediaより抜粋)。