よく、「願望を実現させるには、その願望を持ち続け、確信を強めることだ」なんてことを言いますね。
確かに、「そうなればいいなぁ」とのんきに思っているのと、「必ずそうなる!」と確信を持っているのとでは、だいぶ実現の可能性が違うと思います。
(「1%でも確信が欠けたら成就しない」といった悪い意味でのスピリチュアルな意見には賛同しかねますが・・)
一流のスポーツ選手も試合の前に、優勝カップを掲げている自分の姿や、優勝スピーチをするところなどをなるだけ具体的にイメージする、なんて話も聞いたことがあります。
きっとそうしている人のほうが迷いなくプレーできるので、勝率は上がる気はしますね。
無理やり数式ぽく表現すれば
願望 ✕ 思いの強さ = 確信
確信 ✕ 思いの強さに応じた知力とエネルギー = 勝利への確率の高さ
といったところでしょうか
・・さて、今日お話したいのは、もうちょっとネガティブな方向のやつです。
皆さん、誰しも「起きてほしくないこと」はあると思います。
・健康を害す ・事故を起こす ・友人と揉める ・奥さんに逃げられる などの個人的なものから
・競合他社の躍進 ・持ち逃げなど社内の不祥事 ・不渡りをつかむ といった事業上のものまで
「起きてほしくないこと」=「具体的な不安」はさまざまです。
本来であれば、こういった具体的な不安に対しては、具体的な対策を講じた上で楽観的にことに臨むべきですよね。
例えば、
・バランスの良い食生活や適度な運動を心がけ、そのうえで楽しく毎日を送る。
・取引先の動静を定期的にチェックしつつ、積極的に与信限度額いっぱいまで取引する。
などです。
しかし、人間は弱いもの。
あまりにも不安が強かったり、考えるのが面倒だったりするとこんなふうに考えてしまいます。
「生活を改めたりしないで、このままずーっと健康でいたいなぁ」
「与信限度を気にせず、たくさん売上が欲しい」
この2つって、たぶん「願望」といっていいと思うんですが、最初に上げたトップアスリートの「願望」とは、ちょっと違います。
その違いというのは、まず最初に何らかのある程度具体的な根拠のある不安があって、マイナスを打ち消したいがために発生した願望であることです。
つまり、マイナスな予測(不安)にマイナス1を掛けて生成された、「スジの悪い願望」ということです。
もしこういった願望を、具体的な不安を打ち消すために持ち続けたらどうなるか・・
はいそうですね、それは「誤った確信」へと変わっていきます。
そしてその「誤った確信」に基づいて行動をしてしまえば、まさしくウォーレン・バフェット氏の言う「誤った前提に対して多くの知力とエネルギーを注げばどうなるか」の答えが出てしまうというわけです。
またまた無理やり数式風に表現すると
具体的な不安 ✕ −1 = スジの悪い願望
スジの悪い願望 ✕ 不安の量 = 誤った確信
誤った確信 ✕ 不安の量に応じた知力とエネルギー = 大失敗
という感じでしょうかね。
この数式に「与信に対する不安」という具体的な事項を代入するとこんな感じです。
1,具体的な不安
なんか最近やたら、A社さんからの注文が増えてるなぁ。
もうすぐ与信限度額超えそうだけど大丈夫かな??
A社さんに何かあって売掛が回収できなかったりしたらやだなあ・・
2,具体的な不安 ✕ −1 = スジの悪い願望
いや古い付き合いのA社さんのことだ、たぶん大丈夫でしょう。
担当のaさんも「我がA社は絶好調!」っていってたし。
3,スジの悪い願望 ✕ 不安の量 = 誤った確信
とうとう、与信限度額超えちゃったよ。
これだけ売れるってことはA社さんの営業政策がうまく行っているに違いない!
よーし決めた! 勝ち馬に乗るぞ!!
ウチも与信限度額を思い切って2倍にしてガンガン売っていこう!
支払い期日も先方の希望通り1ヶ月伸ばして販売を応援していこう!
4,誤った確信 ✕ 不安の量に応じた知力とエネルギー = 大失敗
え〜〜!! A社さんと連絡が取れないぃ〜〜っ???
事務所はもぬけのからだって〜〜〜っ!! 倒産ってことか!!
当初与信限度の3倍に膨れ上がった売掛金、1円も回収できないじゃん・・
くっそー あいつら うちの商品を原価割れで販売して逃走資金つくてったのか!!
他の会社の被害は?? え? みんな現金取引に切り替えてた・・
被害受けたのウチだけ、ってわけ??・・・とほほ
とまあ、賢明な皆さんにはこんな事は起こらないと思いますが、、このような例は枚挙に暇がありません。
このばあいでも、「売掛金の未回収」という具体的な不安が発生した段階で、それに−1を掛けた願望を持つことなく、不安は不安のまま受け止め、きちんと調べたうえで、与信限度を再設定するなり、与信限度を墨守するなり、取引を停止するなり、の対策を打ったうえで取引をおこなっていれば、ここまでのダメージは受けずに済んだわけです。
身近な歴史でも、桶狭間における今川軍(下から攻め上がる織田軍を見つけていたのに放置していた説があります)、日ソ中立条約を結んでいたソ連の侵攻を許した日本政府、日本車の脅威をまともに受け止められなかったアメリカのビッグ3、一時は世界シェアの半分を占めていた半導体日本の凋落(10%台)等々、不安に−1を掛けてしまったために起きた悲劇は枚挙に暇がありません。
「あいつは大したことない」「某国は崩壊する」「コロナは3月収束」等々
今あなたが持っているその確信の下を掘ったとき、−1を掛けた具体的な不安が埋まっていないか、十分ご注意くださいね。
☆わざわざ「具体的な不安」と書いているのにはワケがありまして、漠然とした「根拠のない不安」は持つ必要がないと思っているからです。
詳しくは、エースラボのWebサイトのこちらをご覧ください
→ 経営やってみたラボ vol.4